「ウサギさん、行くわよ……あら、麻里亜さん?」



靴を履き替えてきた菅原が現れると、迷いなく、名前を呼んだ。

恐らく彼女の名前だろう。

知り合い?



「あ……く、Q様……?」



彼女は菅原を見るとまたビクッと肩を跳ねさせて驚いていた。

知り合い……というわけではないのか?



「ウサギさんどうしたの?」



菅原は俺の隣まで足を運んで俺にそう疑問をぶつけた。



「この人、傘がないみたいで……」

「な、ないわけじゃないのっ!……ちょっと、壊れてしまって……」



壊れて使い物にならなくなったのだろうか?

申し訳なさそうに話す彼女は、菅原から視線を外し、うつむいてしまった。



「……ウサギさん、傘はあるのかしら?最近は雨合羽よね?」

「あ、はい。折りたたみが」

「麻里亜さん、歩きながらお話聞かせてもらっても構わないかしら?」

「あ、はい。……大丈夫です」