長い時間はゆっくりとしたテンポで過ぎ行く。 明るい曲、暗い曲。 今までの想いを思い出すように、一つ一つ丁寧に歌った。 一度歌に集中すると、どうしてもその世界に浸ってしまう。 この感覚、この、温かい気持ち。 やっぱり俺は…… ――歌が好きだ―― 何時間経っただろう? 歌っていると、時間を忘れる。 そろそろ終わりの時間だ。 「これで、最後になる。このライブでも、梅亜も……。後でこの日の思い出が店頭に並ぶ予定だから、みんなよろしくな」 最後に届け。 「春雨-はるさめ-」