「うさぎさんのことは、転入して来た日からずっと知ってる」
『転入して来た日から』
ということは、以前の俺については知らないはずだ。
胸をホッとなでおろした。
「あなたには少し興味があったの。理事長に、用心棒とかなんかで理由付けてそばに人を置くなら、友達を作ってもいいって言われたの。だから今日話しかけた」
表向きには、友達を作ってはいけない……ということだろうか?
でも秘密を共有する友達ならいいということ。
Qを配慮してのことだろう。
「でも、そんなことよりも、なんで俺のことを知ってた?それに、最初から俺を用心棒にする予定だったってこと?」
俺がそう聞くと、にこり、彼女は笑った。
それは困った笑みでも、作った笑みでもなく、心からの笑顔だった。
「ウサギさんが来て、少しだけその周りが明るくなっていたのを、私は見てたから」
「明るく?」
そんなようには俺からは見えない。
でも人を避けているはずなのに、いつの間にか周りに囲まれていることは、よくある。
「ウサギさんの性格からかな、みんなの輪があなたを中心にして明らかに広がった。その様子を見てて、話がしたくなった」
……別に俺は、特になにもしてないのに……。



