一度歌に集中するとどうしてもその世界に浸ってしまう癖は直っていない。

最初は歌い方を変えようとしていたのに。

"違う歌手"の歌でも自分の声を吹き込むことで、新たな音楽が作られる。



自分の手で作られる音楽は、心地好い……。





久しぶりに歌に浸った。

心地いい、この感覚は変わっていない。



けれど、歌い終わって気付いた。

周りの反応。



みんな目を見開いて……。

いや、半年前にも経験済みだ。

これは、気付かれている。





「……神崎梅亜……」



ポツリ、委員長が言葉をこぼした。

それを聞いて、あぁ、終わったなと思った。



「……やっぱり?神崎の歌い方にそっくりだよね……」



神崎梅亜も人気歌手の一人。