この胸いっぱいの愛を。






………神田さんって、私?


じゃ、ないよね、おそらく。

速見くんが言ってる“神田さん”は、将兄のことだ。




「雑誌で見た時から、ずっと憧れてたんです!!」

私の手を掴んだまま興奮気味に話す速見くんは、まるでさっきまでとは別人みたいだった。

アユと私はもちろん、彼のことをよく知ってるであろう健吾までも、彼の変わり様に呆気にとられている。


「雑誌って……いつの?」

「最初に見たのは、三年前の春の記事です!」

圧倒されながらも尋ねると、待ってました、と言わんばかりの笑顔。

そしていきなり肩にかけていたカバンを下ろし、ガサガサと中を漁り始める。


………もしかして、その時の雑誌を常に持ち歩いてるとか?


私は黙って、彼の行動を観察していた。

私の推察は、方向性だけなら当たっていたと思う。




ただ、私の想像を遥かに越えていたってだけで。









「速見くん、それ………」




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