私がポツリと呟いた言葉に、速見くんは目を見開いた。
「部長の、知り合いですか!?」
………やっぱり、そうだった。
「知り合いなのは私じゃなくて兄なんだ。
向こうは、私のこと知らないと思う」
私が説明すると、速見くんが不思議そうな顔をした。
「あの、お兄さんって……?」
「え、あぁ」
そーいえば私、まだ速見くんに名前言ってなかったっけ。
「私、神田桃香。
海星中男子テニス部のマネージャー兼、部長の神田将一郎の妹」
「か…んだ………」
口を開けたまま、ポカンとしている速見くん。
そのままフリーズしていて、動く気配はない。
…………どうしちゃったんだろ?
横にいるアユも、不安げな表情で速見くんを見ていた。
そして、数秒後。
「ほ、ほんとですか!?」
「!!」
いきなり私の手を握る速見くん。
私を見つめる目が、キラキラと輝いている。
………なんか、小動物みたい。
嬉しそうな速見くんの表情を見ると、私まで和んでしまう。
そーいえばなんで、将兄のこと知ってるんだろ?
新人戦もまだだし、接点だって何にもないはずなのに。
「俺、神田さんの大ファンなんです!」
「…………え?」
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