「そ……そうか」
桃香の笑顔を見ると、口元が自然と緩んでしまう。
俺がずっと隣にいて、その笑顔を守ってやりたいと思わずにはいられないんだ。
胸の鼓動は治まることをしらない。
でも何故か、とても満たされている気持ちになる。
そんな複雑な心境で、俺は階段を駆け上がる桃香を見えなくなるまで眺めていた。
「将、もしかしてさ………」
「!!」
桃香が部屋に入ってドアを閉めた後、背後から深刻そうな声が聞こえた。
言うまでもなく、兄さんの声だ。
笑いの波は完全に去ったらしく、いつになく真剣な表情。
─────もしかして、バレたのか?
俺が、今までずっと隠していた感情が。
「お前さ、俺に何か隠してるだろ?」
そう言って俺の両肩を掴む兄さん。
突然核心に迫られ、俺は俯くしかない。
………やはり、気付かれたか。
だが、この気持ちだけは、言うわけにはいかない。
なんとしてでも、兄さんの尋問に屈するわけにはいかないのだ。
たとえ、いつかは離れ離れになる日が来るとしても……
まだ、離れたくないから。
「今から聞くことにちゃんと答えろ。
将、お前─────……」
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