この胸いっぱいの愛を。








「クッ」

「?」

と、その場で突然踞(うずくま)ってしまった兄さん。

しかも、何やら体が小刻みに震えている。

一体どうしたというんだ……。


───────すると。









「っブハハハハハハハ!!!!!」

「!!」


今度は突然笑いだした。

ということは、さっきの妙な行動は全てこの前兆だったのか。

にしても、ここまで笑われるほど可笑しなことを言ったつもりがないのだが。

腹を抱えて転がり回る兄さんを見ていたら、少し腹が立った。


「……何が可笑しい」

いつもより低めの声で凄むと、兄さんもやっと笑いが治まってきたらしく、ゆっくり立ち上がった。


「いや、だってさ………ククッ。
 ヤバい、ツボッた!」

「ツボ……?」

“ツボッた”とはどこの言葉だ?

最近若者が使っている、俗に言う流行り言葉の一種だろうか。

とりあえず、言われて良い気はしないな。


「あ…将、“ツボる”って言葉わかる?」

兄さんが、涙を溜めた目で俺を見る。

「知らん」

……知る必要もない。


「えっと、“ツボる”ってのは、“ツボにハマる”の略語だよ」

「そうなのか」

勝手に説明を始めたので、適当に相槌を打っておいた。


「その“ツボる”という語は、辞書に載っているのか?」

「載ってないと思うよ〜」

「なら、覚える必要はない」




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