この胸いっぱいの愛を。




「な、何故そうなるんだ!?!?」

予想もしていなかったことを言われ、つい大声を出してしまう。

ハッとしてキッチンに目をやると、ちょうど振り向いた桃香と視線がぶつかった。


「どうしたの〜?」

首を傾げながら尋ねてくる桃香。

そんな姿を見ただけで、鼓動が恐ろしいくらいに速くなる。


────やはり俺は、病気かもしれん。




「なんでもないよー☆
 それより桃香、牛乳のパックって何本入ってる?」

「んーとね、あ、もう一本しかない。
 明日帰りに買ってくるね」

「うん、よろしく♪」


兄さんが上手く話をはぐらかした。

普段は良くも悪くも“適当”な兄さんだが、やる時はきちんとやるのだ。

まぁ、今が「やる時」だったのかどうかはわからないが……

とにかく、話をはぐらかしたりするのは、俺にはとてもじゃないができない芸当だ。


「急にデカイ声出すな、バカ!」

「な………っ!?!?」

小声で俺を叱りつける兄さん。

にしてもバカとはなんだ、バカとは!

「……バカは兄さんだろう」

バカと言った奴がバカなんだと、よく言うではないか。


苦し紛れにそう反論すると、兄さんはポカンと口を開けてフリーズした。




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