この胸いっぱいの愛を。






「……………」

「……………」


重い沈黙に耐えられず、口を開こうとしたその時。






「あれー、今日は帰りも別々?」

聞き慣れた声に振り返ると、兄さんが腕を組んだ状態で壁に寄り掛かっていた。

いつからそこにいたのだろう。

兄さんは俺より早く家に着いていたらしく、もう風呂に入ったのかパジャマを着ていた。


「……祐兄、ただいま」


俺の隣にいた桃香が笑顔で言った。

しかし、その笑顔に少し陰が差しているように見えるのは気のせいだろうか。


「桃香、学校で何かあったか?
 いつもより元気ないぞ?」

心配そうに桃香の顔を覗き込む兄さん。

どうやら、俺の勘違いではなかったらしい。


「えー、そんなことないよ!
 確かにこれから部活が1週間休みだから、寂しいなぁとか思ってたけど……
 いつも通り、元気だよ?」

「そうか……」


兄さんは一応納得したような素振りを見せたが、それは形だけだったらしい。

桃香が飲み物を取りに冷蔵庫に向かうと、すぐに俺に近付いてきて、耳打ちをした。






「お前のせいだよ、絶対」




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