テレビでも見て、気分転換しよう。

そうすれば、時間が経つのも少しは早く思えるだろう。

普段はテレビなど滅多に見ないが、気を紛らわすのにはちょうど良い。


そう思い、リビングに続く廊下を歩いていると……


偶然目に入った玄関の窓に、二つの人影が見えた。

誰かが家の前で、立ち止まって話をしているようだ。


大して気にも留めず、通り過ぎようとした、ちょうどその時。









「じゃ、俺んちこっちだから」




窓越しに耳に入ってきたのは、聞き覚えのある声。

俺の足は、無意識に玄関へ向かっていた。


気付かれないように、窓の外を覗き見る。

まず最初に目に入ったのは、赤に限りなく近い茶髪の男。


間違いなく、後輩の駿河真だ。

毎日部活で見ている鮮やかな色の髪は、やはり暗闇でも目立っていた。


そしてその隣には、彼より一回り……いや、二回りも小さい体格の人物。






────俺が、その人物を誰かと見間違うわけがなかった。

だって、そこにいたのは………









「桃香………」




昨日までは俺の隣にいた、彼女だったのだから。




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