…………もう。

なんでみんなして私を、子供扱いするんだろ。

柊也くんや将兄、祐兄はともかく、一つしか歳が変わらない駿河先輩まで。


「じゃ、俺んちこっちだから」

先輩が指差した先には、外灯がほとんどない、暗い道が続いている。

「あの、気を付けてくださいね?
 痴漢とか、いそうだし…」

「バーカ!
 俺、これでも男だぞっ?」


心配して言ったつもりが、デコピンを食らわされた。


「お前って、思ってたより面白い奴だな!
 二人で話したことなかったから、全然気付かなかったわ」

「面白い、って……」

喜んで良いのかな、これは。


「誉め言葉だよ、誉め言葉!」

「えっ……あの」

「じゃあ、またなっ!」









…………行っちゃった。




駿河先輩って、嵐みたいな人。

突然現われたと思ったら、私の心を乱すだけ乱して、またすぐに去っていく。


私は先輩に触れられた頭と額が、まだ熱を持っているのを感じた。


今日の私は、なんかおかしい。

きっと、駿河先輩のせいだ。




私は初めての感情に戸惑いつつ、先輩が去っていった方向をいつまでも見つめていた。




.