この胸いっぱいの愛を。




「す、すいません……」

「ったく。ちゃんと前見て歩けよ?」

先輩がそう言ったと同時に信号が青に変わり、私達は並んで横断歩道を渡った。

足を踏み出すたびに、先輩の腕に私の肩が当たる。


「なぁ、部長と喧嘩でもした?」

「っ」

朝祐兄にされたのと、全く同じ質問。


「なんか今日元気ないからさ……
 お前も、部長も」

「え……将兄も?」

「あぁ」

先輩がペットボトルの残りのコーラを一気に飲み干して、頷く。

近くのゴミ箱目がけて投げられたボトルは、カラン、と音を立てて中に吸い込まれた。


「最初お前に会った時は全然似てないと思ってたけど、やっぱ兄弟だよな。
お前今、昼休みの部長と同じ表情してるぜ」

「同じ、表情……」


それは、どんな────……?




「んー、そうだな……」


しばしの沈黙、そして。









「守ってあげたいって思わせるような、そんな表情かな」

「ぶっ!!!」




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