結局部活が終わるまで、将兄と私は一度も話さなかった。
昨日のことを忘れて普通に話し掛けるなんて器用なこと、私にはできないから。
将兄が話し掛けてくれるのを、待っているしかないんだ。
もしかしたら私が考えすぎなだけで、部活が終わったら将兄は何もなかったような顔して話し掛けてくるかもしれない。
そんな希望も少なからずあった。
でも……………
「あの……部長は?」
「あれ、まだいたのか神田妹!
お前の兄ちゃんなら、少し前に一人で帰ってったぞ?」
「え………」
その希望は、いとも簡単に打ち砕かれてしまった。
「めずらしいな、お前らが帰り別々とか。
今から追い掛けたら、まだ間に合うんじゃねーの?」
「……そう、ですね。
ありがとうございます。
あと、お疲れさまでした」
「さんきゅ。
お前も、お疲れさん」
私は陽気に手を振る先輩にペコリと頭を下げて、静かに部室のドアを閉めた。
………これで、疑惑は確信に変わった。
信じたくない事実が、目の前にある。
私は昨日以来、将兄に避けられてるんだ。
「おっ、神田桃香はっけーん!」
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