この胸いっぱいの愛を。




「お前、よくここに来んの?」

「はい、週に2、3回は」


私は先輩の質問に答えて、再び空を見上げた。

鳥が、私たちの頭上で群れをなして飛んでいる。


「へー、結構頻繁に来てんだな!
 ま、俺もそんなもんだけど」

「え、そーなんですか!?」


彼が私とほぼ同じ頻度でここに来るなら、今まで一度も会わなかったのが不思議な位だ。


「ここ、俺のベストプレイスだから」

先輩は無邪気に笑って、屋上の片隅にある古ぼけたタンクによじ登った。

ギシギシと錆びた音を立てて、タンクが左右に揺れている。


「よいしょ……っと」

上に立って、両手を広げる。

まるで、今にも翼が生えて飛んでいきそうだ。


「ん、やっぱサイコー!
 お前もこっち来てみろよ!」


先輩に手招きされ、私も渋々タンクに上った。

スカートが風でめくれないよう、細心の注意を払いながら。


「そんなに気にしなくても、中覗いたりしねーって(笑)
 ま、不可抗力で見えちゃうかもだけど」

「………セクハラ」

必死の抵抗も虚しく、私の呟きは空に吸い込まれてしまった。


「ここって、学校の中で一番空に近い場所なんだよな。
 そう考えると、なんか、感慨深いっつーか、なんつーか……」


─────なんか、良いよな。




適当な言葉が見つからなかったらしく、先輩はそれだけ言って笑った。

でも、言いたいことはなんとなくわかったから、私も小さく頷いた。




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