─────ダメだ。
これ以上、桃香に近付いてはいけない。
自分が兄であることを、忘れてはいけないんだ。
俺の本当の気持ちが桃香にバレれば、彼女は俺を拒絶するだろう。
純粋に俺を慕っていた彼女の気持ちを、裏切ることにもなる。
そんなこと、絶対にあってはならない。
俺は今まで通り、兄として妹の桃香に接していけば良いんだ。
そうすれば、これからも一緒にいられる。
彼女の気持ちを、無下にすることもない。
俺が─────………
俺が、自分の気持ちを抑えていさえすればいい。
それで……それだけで、良いんだ。
「……しっかりしろ、将一郎」
そう言って、自分に喝を入れる。
悲しみを、紛らわすために。
………大丈夫だ。
今までだって、一人でこの気持ちと闘ってきたじゃないか。
誰に相談するでもなく、自分一人で乗り越えてきた。
だから、これからも今まで通りに………
「将…兄……」
「!」
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