「んん……」
「!!」
突然発せられた声に驚いて、
俺は反射的に桃香から手を離した。
……起こしてしまったのだろうか?
しばらくの間、息をすることも忘れて桃香を見つめていた。
だが、ピクリともしない様子を見ると、どうやら起きてはいないようだ。
俺は安堵のため息を零し、
再び彼女の髪に降れ、そっと撫でてやった。
艶のあるきれいな黒髪。
その感触が心地よくて、
ずっとこうしていたいと思った。
髪を撫でていた手で、
今度は頬にも触れてみる。
生まれたての赤ん坊のように、
白くて透き通った肌。
マッチが三本くらい乗りそうな、
長い睫毛────………
「……きれいだ………」
俺は無意識に、そう口走っていた。
慌てて口を塞いでも、もう手遅れで。
誰も聞いていないのに、恥ずかしさで顔が真っ赤になっていくのが、自分でもわかった。
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