〜将一郎side〜




「将兄、入るよ」

「……あぁ」


俺はドアに背を向けたまま返事をした。

ガチャリ、と音がして、ドアが開く。


桃香は何も言わずに俺のベッドに腰掛け、
呑気に鼻歌を歌っている。






────俺の気も知らずに。




「将兄、今やってるの、宿題?
 それ終わってからで良いよ。
 私、ここで待ってるから」

「あぁ、すまんな」


桃香は明るい声で言って、
ボフボフと布団を叩いた。




────参ったな。


桃香がいると思うと、
集中できない。

心臓がうるさくて、
思考が上手く働かない。




………一体どうしてしまったんだ、俺は。




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