この胸いっぱいの愛を。




(あぁ、やっぱり!)

予想通りの言葉を返されて、私はガクリとうなだれた。


――――――――だけど。




「“あの”神田の妹だ。
 俺が知らないわけ無いじゃねえか」

「えっ」


ガバッと顔を上げると、朝比奈くんは憎々しげな表情で窓の外を睨みつけていた。


彼の視線の先には、四角く切り取られた青空がある。

だけど、本当に見ているのは、そんなものじゃない。


彼の目に映っているもの。

それはきっと、私には見えない何か。




「で、何があったんだ?」

「え」


ふいにこちらを向いた彼と目が合って、一気に現実に引き戻された。


「え、じゃねーよ。
 泣きながら全力疾走してたくせに、何でもないとは言わせねーぞ?」

「うっ」


それを言われてしまうと、もう何も言い返せない。


「あ、私そろそろ帰らないと…」

「待て」


立ち上がろうとしたら腕を思い切り掴まれて、私は前につんのめった。


「……何ですか」

「……今帰って良いのかよ」




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