この胸いっぱいの愛を。




将兄の部屋のドアをノックする直前に、
私は勉強道具を持ってないことに気付いた。


足早に自分の部屋に行って、
筆箱と教科書だけ鞄から引っ張り出す。

新品同様で、折り目すらついてない。




……部活で忙しいから、仕方ないよね。


私は心の中で言い訳をして、
部屋から出ようとした。




─────その時。




「ん?……あぁ、写真か」


カタリ、と静かな音を立てて、
棚の上にある写真立てが倒れた。

多分、私が棚にぶつかったからだ。


「これ、懐かしいなぁ……」


その写真は、私達が小さい頃のもの。

記憶が正しければ、
この家に初めて来た時の写真。




実は一緒に暮らしてるお母さんは、
私の本当の母親じゃない。

お父さんは、実の父親なんだけどね。




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