この胸いっぱいの愛を。




返事をしたその声が、微かに震えていた。

頬に手を当てると、温かい雫が指先を濡らす。


私、なんで泣いて――――――






「馬鹿だよなぁ、部長も」

「?」


ゆっくり顔を上げると、そこには苦笑している先輩がいた。


「こんな可愛い妹を泣かせるなんて……
 ホント、大馬鹿モンだよ」


窓の外を眺めながら呟く先輩の横顔を見て、ハッとした。




――――――馬鹿は、私だ。


泣きたいのは……

誰よりも悲しいのは、先輩のはずなのに。




「ごめんなさい、私……」


慌てて涙を拭い去ると、あの日と同じ温もりが、肩に触れた。


「お前が謝ることじゃねーよ。
 小さい時から、ずっと一緒にいたんだろ?
 寂しいと思うのは、当たり前のことじゃん。」


――――そーいう時は、我慢しないで泣いても良いんだよ。






「っ!!」




あぁ、どうしてこの人はこんなにも、私が求めている言葉をくれるんだろう。


どうしてこんなに優しい人が、こんなに辛い恋をしなければならないの?




―――私はこの時、初めて神様を恨んだ。




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