物心ついた時から、ずっと一緒にいた将兄。
小学生の時、ドッジボール大会で私の顔にボールを当てた男の子に、思い切り飛び蹴りを食らわせたり。
ハイキングの時、足を挫いて歩けなくなった私を、ずっと負ぶったまま歩いてくれたり。
この前だって、テニスコートで転んだだけなのに、凄く心配してくれた。
………恥ずかしくて、直接は言えないけど。
将兄は私にとって、自慢のお兄ちゃんなんだ。
―――そんな将兄に、初めてできた彼女。
将兄が、初めて恋をした相手。
将兄が誰かを好きになるなんて、考えたこともなくて。
出会って約一年の駿河先輩は感づいていたことなのに、私は全然気がつかなくて。
悔しいような、
寂しいような、
悲しいような。
そんな思いが、こみ上げてくる。
「っ、ダメだなぁ……私」
あれから何年も経ったのに、ちっとも変わってない。
将兄が初めて雑誌に載ることになった時、素直に喜べなかったあの頃の自分と。
彼女と並んで歩く将兄を見て、胸を痛めている今の自分。
「おぃ……なに、泣いてんだよ?」
「へ………?」
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