この胸いっぱいの愛を。




桃香と別れた後、俺はそのまま帰ろうとした。


しかし家に着いた時、ふいに後輩の駿河のことが頭を掠めたのだ。


駿河の停学は、俺の力不足が招いた結果。

それなのに、あの日は色々あり過ぎてまともに礼すら言えなかった。


直接会って、きちんと謝りたい。

そして、助けてくれた礼を言いたい。


そう思い、俺は今来た道をすぐに引き返した。

駿河の家には、一度用があって行ったことがあるので、行き方には困らなかった。




そして、駿河の家にたどり着こうという時。


俺の目に飛び込んできたのは、衝撃的な映像だった。






…………妹の桃香と、後輩の駿河が抱き合っているという現実。




一瞬、目の前が真っ白になった。


“友達と会う約束”があると言っていた桃香を思い出す。

あの言葉は、嘘だったのか?


ショックとか、悲しいとか……


そんな言葉では言い表わせない、深く、冷たい気持ち。


絶望とは、こういうことを言うのか。


お互いの背中に腕を回して微動だにしない二人を見つめながら、そんなことも考えた。




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