〜将一郎side〜
部屋に着くなりベッドに倒れこんだ俺は、深いため息を吐いた。
つくづく、自分を最低だと思った。
今になって、桃香の手を振り払ったことに対する後悔の念が押し寄せてくる。
もっと他に、やり方があっただろうに。
今度こそ、嫌われてしまったかもしれない。
自分に笑いかけてくれなくなるかもしれない。
そう考えると、どうしようもなく不安な気持ちになった。
目を瞑ると、嫌でも思い出すあの光景。
忘れたいのに、忘れられない。
掻き消そうにも、頭の片隅にこびりついて、いつまでも消えてくれない。
誰も悪くないことなんて、わかりきっている。
だからこそ、辛くてたまらない。
行き場のない想いを持て余すことしかできない。
悲しくて仕方ないのに────……
涙は、流れなかった。
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