……気持ちに気付いたのは、入学式から二週間くらい経ったある日。
俺は下校する生徒の波に逆らって、学校へ向かっていた。
何故なら、宿題のプリントを机の中に置き忘れたから。
こんな見た目でも勉強は一応まともにやっていた俺。
面倒だと思いながらも、教室に取りに行った時。
「甘い!!」
突如耳をつんざいた怒声。
一瞬自分に対する言葉かと思って、驚いて足を止めた。
しかし、声は遠くから聞こえてくる。
しかも、聞き覚えのある声だ。
俺はその声に導かれるように、フラフラと歩いた。
着いた場所は、テニスコート。
そこには………
今までに見たことがないくらい必死な表情でラケットを振る、先輩の姿があった。
「すげぇ……」
そう、口にせずにはいられなかった。
コートの中を縦横無尽に走り回る先輩は、凄くカッコ良くて…
今までで一番、輝いて見えたから。
あまりの凄さに、当初の目的なんて頭から抜け落ちてしまった。
俺は部活が終わるまで、そこから一歩も動かなかった。
そしてその後、全速力で走りだしたんだ。
教室ではなく、職員室に向かって。
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