この胸いっぱいの愛を。




普通、入学式にこんな格好をしていたら、注意されるのが当たり前。


だけど、俺は違った。


どんな格好であれ、誰も俺に注意できる人はいない。


そう、確信していた。




何故なら俺は………






理事長の、孫だから。




もちろん、理事長の孫だから叱っちゃいけないなんて、そんな決まりはない。


だけど、先生達が遠巻きに俺を見ているのが、何よりの証拠。


そんな決まりがなくても、俺の肩書きを意識していることが、明白だった。




そして、俺に誰も注意しようとしないのには、もう一つ理由があった。


それは、俺が病弱だということ。


どんなに見た目を変えても、その事実は変わらない。


今考えると、気付いてた人もいたのかもしれない。


………俺が、虚勢を張っていたことに。




しかし、ガキだった俺がそんなことに気付くはずもなく……


注目を浴び、天狗になっていた。




その時は、まだ思ってもいなかった。


自分を大きく変える人物……


どうしようもない俺を救ってくれる人物が、すぐ近くにいるなんて。




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