〜駿河side〜
海星中学の、第49回入学式。
あの日は、疎ましいくらいによく晴れていた。
俺の周りには、幸せそうに笑いながら歩く親子連れ。
華やかな桜並木の下を一人で歩いている自分が、とても惨めに思えた。
…………俺は、物心ついた頃からお袋と二人で暮らしてきた。
俺の親父は、俺がまだ小さい時に、死んでしまったから。
お袋は、親父が死んでから何かにとり憑かれたように必死で働いた。
俺が学校に行く前に仕事に出ていき、帰ってくるのは、俺が寝た後。
それが毎日で、当たり前だった。
お袋がそこまで必死に働くのには、理由があった。
………俺が、身体が弱かったから。
だからお袋は、病院でかかるお金のために、朝から晩まで働かざるを得なかったんだ。
何か、深刻な病気だったわけじゃない。
でも、風邪をこじらせて入院したりすることはしょっちゅうあって。
要するに俺は、人よりも金も手間もかかる子供だったってわけ。
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