一旦口に出してしまったら、もう止めることはできなかった。


「私が将兄の妹だから、こんなことしたんですか?
 将兄が無理なら私でも良いやって思ったんですか?
 そんなの………」




そんなの………


最低だよ。




「駿河先輩……
 見損ないました」


将兄が好きって気持ちは、その程度なの?

その為に一生懸命練習して……

二年でエースって言われるほど、強くなったんじゃないの?


この数日間で、何かあったのかもしれない。

けど、それでも………




あの日、目をキラキラさせて話してくれたあの目標が嘘だったなんて、思いたくないよ。

今まで追ってきた夢を、簡単に諦めてほしくない。


そう思うのは……

私の、ワガママなのかな。








「今日はこれで、失礼します」

先輩の目を、見ることができないまま……

私は立ち上がって、その横を通り過ぎようとした。




─────だけど。









「行くなよ……」


蚊の泣くような声が聞こえて、私は思わず足を止めた。




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