この胸いっぱいの愛を。




………運が良いのか、悪いのか。

屋上でバッタリ会った時の記憶が蘇る。


私が振り返った、その先には………








「おぉ、久しぶりだな神田桃香♪」

以前と変わらない笑顔で右手を上げる駿河先輩。

私をフルネームで呼ぶところも、変わってない。


………って、当たり前か。


あの時から、まだ一週間も経ってないし。

色々あったから、長く感じるのかも。




「先輩、元気そうでなによりです」

私がそう言うと、先輩はVサインをして見せた。




ジャージ姿で、額に汗が浮かんでいる先輩。

もしかして………


「走り込み、ですか?」

「おー、よくわかったな♪」


やっぱり、そうだった。

部活に出れなくても、練習は欠かさない。

それはやっぱり………




将兄に、勝つためなのかな?




「お前、部活帰りだろ?
 部長と一緒じゃないのか?」

将兄が隣にいないことを不思議に思ったのか、先輩はそう尋ねてきた。


「……将兄には、先に帰ってもらいました」

「?そっか……
 つーか、俺んちすぐそこなんだよね☆」


先輩は「偶然ってすげーな」と笑いながら言った。

まさか自分に会うために私がここまで来たなんて、先輩は思ってもいないらしい。




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