この胸いっぱいの愛を。




「気を付けるんだぞ!!」

「はーい!」


背中に将兄の声を受けながら、私は反対方向に向かって歩きだした。

こんな暗い道を一人で歩くの、久しぶりな気がする。

私は自分で断っておきながら、隣に将兄がいないことをひどく心細く感じていた。


「えっと……ここを曲がって、あの信号を左に曲がって……」


携帯に内蔵されているナビを使いながら、駿河先輩の家に向かって歩く。


ナビって初めて使ったけど、意外と便利なんだなぁ。

だって私、これがなかったら絶対迷ってたもん!!


近代科学の発展に感謝しながら、私はどんどん足を進めた。




───────そしてついに。






「あの角を曲がったら、駿河先輩の家……」


どうしよう……

緊張してきた!!


さっきまでなんともなかったのに……

寧ろ早く着いて欲しかったのに!




“思い立ったら即行動だ!”


将兄の言葉が、再び脳裏を掠める。




…………ごめん、将兄。


私、やっぱり無理かも。




「学校で会った時で良いか……」

緊張に負け、引き返そうとした、その時。









「………あ」




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