この胸いっぱいの愛を。






「え……………」


佐野先輩の口から出たのは、予想外の言葉。

将兄にはヒミツ、って………




どういう、こと?






「あの、駿河先輩の目標って……」

「?神田先輩をテニスで倒すこと……
 ですよね?」


不思議そうな顔をしてそう答えた佐野先輩。

私はというと、完全に混乱状態だ。




「じゃあ私、失礼しますね。
 機会があったらまたお会いしましょう」


先輩はそれだけ言って、ドアの向こうへ消えていった。

一人屋上に残された私は、フェンスに背中を預けたまま考えを巡らせる。




………駿河先輩の目標が、将兄にテニスで勝つこと?

だとしたらこの前屋上で聞いた話は、何だったんだろう。









────テニスでその人に勝って、俺のことを認めてもらう!


────それが、俺の当分の目標!




あの時言ってたのは、将兄のことだったの?

そう考えれば、辻褄があう。


でも、だけど…………






私はあの時の会話を……


駿河先輩の言葉一つ一つを、必死で記憶の底から引っ張り出す。




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