「……私は、好きな人の大事な人を傷つけたんです。
言い訳をしてまでのうのうと好きでいるのは、私のプライドが許しませんよ」
佐野先輩は空を見上げながら、スッキリした顔で言った。
その瞳には強い意志が宿っているような、そんな気がした。
「だけど「これからは、」
まだ諦めきれない私の目を正面から見据えて、先輩はニコリと微笑む。
「これからは………、
一クラスメートとして、彼の目標を応援することにします」
先輩は、ドアに向かってゆっくりと歩きだした。
私はその後ろ姿をただ見つめていた。
しかしドアの一歩手前で立ち止まると、先輩はまた私の方に向き直り、
「神田さんは駿河君の目標、知ってるんですか?」
と、尋ねてきた。
「?えぇ、まぁ……」
そう言って、コクリと頷く。
駿河先輩の目標って……
この前ここで言ってた、あのことだよね?
だとしたら、一応知ってることにはなるのかな。
相手が誰かまでは、知らないけど。
私が勝手に納得すると、佐野先輩はクスリと笑って、「頑張ってほしいですよね」と言った。
「あぁ、それから……」
ポン、と手を叩いて、先輩は少し声を抑えてこう付け加えた。
「お互い、神田先輩には秘密にしておきましょうね!」
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