この胸いっぱいの愛を。




「神田先輩に何かあったら、駿河君が悲しむ。
 そうとわかってたのに、あんなことに協力した私には……
 彼を好きでいる資格は、ないんです」

「そんな………」


佐野先輩は、巻き込まれただけ。

ある意味、被害者なのに。


悪いのは全部、あいつらなのに……。



「諦めなくても、良いんじゃないですか?」


好きな人を諦めるのって、凄く辛いだろうから。

でも、私の言葉に佐野先輩は首を横に振った。


「もう、良いんです。
 昨日の様子じゃ、相当怒ってたみたいだし。
 多分、嫌われちゃいましたから」

力なく笑う先輩は、今にも泣きそうな表情を浮かべている。




────────あの時。


喫茶店の前を通った時、佐野先輩は友達にあの事件のことを相談していたらしい。


そこをたまたま通り掛かった駿河先輩が、将兄の名前に反応して話し掛けてきて……


将兄が危険だと打ち明けたら、目の色を変えて掴み掛かってきたらしい。




「でも………」


本当のことを話したら、駿河先輩もわかってくれるんじゃないかな?

誤解されたままなんて、あまりにも切なすぎるよ。




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