「駿河君、まるで自分のことみたいに話すんです。
神田先輩が試合で勝ったこととか、誉めてもらえたとか…」
佐野先輩は、遠い目をして言う。
きっとその時の駿河先輩の笑顔を、思い浮べてるんだろう。
「神田先輩のこと話してる時の駿河君、なんだか凄く幸せそうで。
よくわからないけど……悔しかったんです」
そう言ってフッと笑うと、佐野先輩は長い前髪をかき上げた。
「可笑しい、ですよね？
女の私が、男の神田先輩に嫉妬なんて」
自嘲気味に笑った先輩に、私は何も返すことができなかった。
私は、恋をしたことがない。
だから、わからないんだ……
“好き”っていう気持ちも、
“嫉妬”という感情も。
そんな私が適当なことを言って慰められるほど、佐野先輩の気持ちはいい加減じゃないはずだから。
「私ね、もう終わりにしようと思うんです」
先輩のその言葉に、私は一瞬耳を疑った。
終わりにするって………
「まだ好き、なんですよね？」
「それは、もちろん」
「なら……」
────どうして、諦めちゃうの？
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