この胸いっぱいの愛を。




「でも……最近はそうじゃない」

哀しげに呟いて、佐野先輩は目を伏せた。


「どう、変わったんですか?」


いつも太陽みたいな笑顔で、部活ではムードメーカー的存在の駿河先輩。

その先輩に、大きな変化があったなんて……


少なくとも私は、全然気付かなかった。




「神田さんは、テニス部のマネージャーだから知ってるかもしれないけど……」


そこまで言って、佐野先輩は一旦口を閉じる。

私はそんな彼女を見つめて、次の言葉を待った。






「……駿河君は、神田先輩に憧れてるんです」




────────憧れてるんです。


……………“憧れ”?


何の変哲もない、その言葉。

だけど、何故か私の心のどこかに引っ掛かる。


この違和感は、一体………。






「この頃の駿河君は、部活のこと……
 特に神田先輩のことばかり、話すんです」


駿河先輩が、将兄のことを?

………なんか、意外かも。


確かに駿河先輩は、他の部員と比べて将兄とよく話す方だけど……


友達に話したりするほどじゃないって思ってた。


昨日の事件のことといい……

あの二人、私が思ってる以上に親交が深いのかもなぁ。




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