〜桃香side〜




私達は体育倉庫まで全力疾走した。

横腹が今までにないくらい痛かったけど、そんなこと気にしてる余裕はなくて。


一秒でも早く、将兄を助けたい。




そう考えれば、痛みにも耐えられた。


そして体育倉庫に着いた私と駿河先輩は、重たい扉を開けて、中に駆け込んだのだ。






「やめろ!!!!!」




先に入った駿河先輩の声が、体育倉庫に響く。

慌てて先輩の後に続くと、視界の端に将兄が入った。


その姿を見て、私は─────……




「っ!!」


無意識の内に、涙を流していた。


そこにあったのは、いつもの威厳溢れる将兄の姿ではなく。

壁にもたれ掛かってボロボロの身体を震わせている、なんとも痛ましい姿だったから。




「将兄!!」

「部長!!」


私達はほぼ同時に叫んで、真っ先に将兄のところへ走った。


私と駿河先輩が突然現れたことに、将兄の隣にいた男やその取り巻きも驚きを隠せないようで。

五人の男女は、目を丸くして私達を見ていた。




「桃香……それに、駿河も……」

驚いたのは、将兄も同じみたいだ。

泣き腫らしたように赤くなった瞳が、私と駿河先輩を捉えた。




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