ポツリ、と呟かれた言葉。
さっきまでとは違って、凄く悲痛な……
悲しみを湛えているような、声。
仲間からユッキーと呼ばれているその男は、俺のネクタイをゆっくりと外しにかかる。
「や、め……」
恐怖のあまり、声が出ない。
動くことも、できそうにない。
金縛りにあったように、俺はされるがままになっていた。
砂埃で茶色くなったブレザーを剥ぎ取られ、ワイシャツのボタンがブチブチと音を立てて弾け飛ぶ。
────もう、諦めるしかないのか?
“諦め”の二文字が、頭の中でチカチカ点滅している。
そして、桃香の笑顔も。
「すま、ない………」
届くはずがないのに、気付けばそう口に出して言っていた。
──────桃香。
守ってやれなくてごめん。
お前を傷つけるような、最低な兄でごめん。
………好きになって、ごめん。
───謝りだしたら、キリがなかった。
身体よりも、心が痛い。
男がついに、俺のベルトに手をかけた……
─────────その時。
「やめろ!!!!!!!」
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