その恐ろしい提案に、俺は意識を完全に取り戻した。
桃香が──────………
桃香が危ない!!!
「やめて、くれ……」
大声でそう叫ぼうとしても、肺が痛くて上手く声を出せない。
「それ、なんか楽しそう!」
「私、ユッキーに賭ける♪」
女子生徒二人が、楽しそうにそんなことを言い合っている。
桃香の兄である俺の存在など、完全に忘れているようだ。
「やめてくれ……頼む、から……」
必死でそう告げると、一人の男が俺を見て鼻で笑った。
「なーに言っちゃってんの?
お前なんかの頼み、聞くわけねーだろ」
氷のように冷たい言葉が降ってくる。
だが、ここで怯むわけにはいかない。
どんなに分が悪くても、桃香だけは……。
「そんなに妹チャン助けたいなら、ここで土下座しろよ。
つっても、両手両足縛られたままじゃ不可能だろーけどっ!」
その言葉に、他の四人も大声を上げて笑いだす。
「く………っ」
俺は自分の無力さに腹が立ち、悔しさのあまり唇を血が滲むほど強く噛んだ。
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