この胸いっぱいの愛を。




「ほら、早く行くぞ!!」

「っ、はい!」


私達は、走りだした。

将兄のいる、体育倉庫に向かって。









「真!!」


角を曲がろうとしたところで、聞こえた声。

先輩は足を止めて、振り向く。


視線の先には、地面に座ったままの、女の先輩の姿。

彼女の瞳から、一筋の涙が零れ落ちたのが見えた。


───────そして。






「      」


雑踏に、かき消された声。

聞こえなかったけど、何て言ってるかはすぐにわかった。






──────ごめんね。




確かに、そう言ってた。


隣にいる駿河先輩を見上げる。

先輩にも、届いたのかな?


私の視線に気が付いたのか、先輩はフッと笑って、小さく頷いた。




「行こっか」


それだけ言って、再び背を向ける。

はっきりとは言わなかったけど……

彼女の気持ちは、きっと伝わってる。

そんな、気がした。




(将兄──────………!)


待っててね。


今、助けに行くから。