将兄を助けたい一心で夢中だった私は、蚊の泣くような声にハッとして見下ろした。
「神田先輩は……体育倉庫にいるよ」
小さい声だったけど、今度ははっきり聞こえた。
体育倉庫──────……!
そう聞くや否や、駿河先輩は私達に背を向けた。
「私も行く!」
咄嗟にそう叫ぶと、先輩の肩が少しだけ震えた。
そして…………………
「ったく……お前ら、やっぱ兄妹だな」
「えっ?」
予想外の言葉が、私に投げ掛けられた。
それって、どういうこと?
私が言葉に詰まっているのを見兼ねてか、先輩が再び私の方を向いた。
その顔は、困ってるような……
でも、少し笑ってるような。
そんな、表情だった。
「お前に何かあったら、部長に合わせる顔がねーんだよな……」
「で、でも「だーかーらっ!」
私の声を遮る駿河先輩。
俯いていると、頭に温かいものが触れた。
「……だから、お前のことは俺が守るよ」
優しい声が降ってきて、ゆっくり顔を上げる。
そこには、太陽のような笑顔があった。
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