ああ、そうか。 僕以外は全員妻帯者だ。 家や家族、守るべきものがある。 いや、僕にだって守るべきものはある。 だけど、それは家族を守るという人々の前ではあまりにも無力だった。 そいつは僕の心にわずかに残った、プライドと呼ばれる、彼らからすると矮小でゴミみたいな存在のことだ。 僕自身、部長の言葉に対してそれが頭をもたげようとしたが、自分の中に沈殿していた心の澱のようなものが、少しだけかき混ぜられた気分になっただけだった。