改札機に千円札を滑りこませ、光る数字とにらめっこする。


ひとり3千円弱。

これが、あたしたちを逃がしてくれる切符。


出てきた2枚のうちの片方を、レオに手渡した。



固く手をつないで、改札に向かう。


すると。



「すみませーん」



よく澄んだ声で、後ろから呼び止められた。



「はい……?」



レオとふたり、振り返って驚いた。



あたしたちに駆け寄ってきたのは、マイクを持った若い女の人と、重そうなカメラを肩に抱えた男の人。



この女の人……たしか関西ローカルの女子アナだ。


アキラさんの部屋のテレビで、何度か見たことがある。



そんなことを考えつつ、いったい何事かとビックリしていると


「街角で見かけた美少年特集なんですけどー」


と、カメラをレオに向けられた。



「ちょ……ちょっとやめてよ」


「わぁ、彼女さんもかわいいですねえ」



今度は、あたしの方にもカメラが向いた。



コンパスで描いたみたいな完璧な円形の、うっすら光るレンズ。


無遠慮に射すくめられて、体が固まった。



これは……まずいよ。


全国放送ではないだろうけど、まずすぎる。



どうしよう……。


どうしよう……。





「そんなガキンチョより俺の方がええ男ちゃう?」




聞き覚えのある大きな声に、顔を上げた。