「心配なんだよ。さくらが他の男に取られるんじゃないかって」



あたしの髪の匂いを吸い込みながら、コウタロウは何度も「心配だ」と繰り返した。




そりゃあ20年も生きていれば、あたしに興味を持つ男の1人や2人は現れる。



可愛い可愛いと繰り返されれば「なるほど、あたしは可愛いのか」と思ったし

逆に中学の頃、隣のクラスの女に面と向かってブサイク呼ばわりされた時は「あたしはブスなんだ」と思った。


付き合ってくれと言われれば自分は求められている人間なのだと思い

男にフラれた時は自分の存在を全否定した。


ヘルスで指名ナンバーワンになった時は自分の存在価値を見出せた。


疲れているという理由でコウタロウにセックスを拒まれた時は、自分なんか死んじゃえばいいって思った。



あたしはあたしのことを何も知らないのである。


だから他人の評価がそのまま自己評価につながるし、そのたびあたしは揺れる。