…何か、あったんだろ?


聞きたいのに、言葉が出ない。


もし聞いたとして、

『陸には関係ない』

なんて言われたら…。


俺はきっと、今度こそ立ち直れない。



「おい、人を急かしといて何ぼーっとしてんだよ。ほら、空いたぞ?洗面所」


だからあえて、何も気づかないフリをして 平然を装った。


「へ!?あ、うん」

ハッと我に帰ったように、姉貴が顔を上げる。


「変な姉貴」

「う、うっさい!早くあっち行ってよね」


シッシッと振り払う真似をする姉貴に、俺も対抗してベッと舌を出す。




いつもの変わらない、朝だった。