朔夜さんは、薄く笑って私を見た。 「軽蔑しましたか?」 私は、ふるふるっと首を振る。 不思議と軽蔑はしていなかった。 ただ…驚いた。 「ご両親に言いますか?」 考えてもみなかった。 でも、両親へ言えば、きっと解雇されてしまう。 朔夜さんは、今朝、『学費免除は有り難い』と言ってた。 生活が大変なのかもしれない。 私の一言で、職を失わせてしまうかもしれないと思うと、言える訳ない。 私はそれ以外の、最大の理由を、頭から追い払った。 朔夜さんにいなくなって欲しくない、という理由を。