私は素知らぬ顔で言い返す。 「なんのこと?」 しかし岡谷さんは、私から視線を外さずに言った。 「窓枠に土。 見るからに大きい靴のサイズ。 床にも多少ついてますね。 それから…… 微かに香水の香りが残ってます」 私の、岡谷さんに対する第一印象を色濃くする言葉だった。 訓練されたドーベルマン。 私の口をついたのは、岡谷さんへの謗(ソシ)りだった。