岡谷さんは部屋の中をしばらく歩き回り、ふと足を止めた。 怪訝な顔をしているであろう私を振り返り、言った。 「先程の元執事、名前は確か……橘でしたか」 そう言われて私の心臓が、ドキン、と跳ねた。 表情に出さないように気を付けながら問い掛ける。 「そうだけど……それがどうかした?」 岡谷さんは私をジッと見詰めながら、質問を返す。 「ここに来ましたね?」