「どうだね? 橘くん以上の執事は、なかなか難しいかもしれんが」 「あなた」 我が家ではいつの間にか、私の前で朔夜の名前を出すのはタブーになっていた。 朔夜はあくまで自ら執事を辞めたことになっており、 初美さんとの関係や、 初美さんに関係を暴露されたことが、 多感な時期にある私に、聞こえないようにする配慮のようだった。 私自身も今更『知ってる』とは言い出しにくく、そのままにしている。