私は驚いた。 普通なら「なんだそんなことか」と思うだろう。 でも、私は奈津紀しか呼び捨てにしている人はいない。 馴れ馴れしく呼ぶことが出来ない。 それほどまでに親しくしている人が、いなかったから。 全てを見透かされているような気がした。 「さ…くや……」 胸がギュッとなる。 目を細め、朔夜はうっすらと笑った。 「もう一度」 「…さくや……」 呼ぶ度に、胸が焦がれる。 朔夜は、良くできました、と言って、私の頭を撫でた。