「傘、忘れた」


玄関の外で空を見上げた。


土砂降りの雨。


傘立てを見れば、そこには大量の傘で溢れていた。


この中の1本くらい……いや、私の良心が痛む。


迷ったあげく、私はこの土砂降りの中を走って帰ることにした。


学校から歩いて駅まで10分、電車で20分、降りたらそこから歩いて10分。


走ればどうってことない距離だろう。


スクールバッグを傘代わりに、息を切らせて走っていく。


しばらく走っていると、ほとんど人通りのない道を青いチェックの傘を差した人がひとりで歩いているのが前に見えた。


あの制服のズボンの柄はうちの高校のだ。